秋は温泉の季節でもあり、ワインの季節でもあります。(このページは秋に書いています。)
11月も半ばになれば、フランスの新酒「ボジョレーヌーボー」が解禁になりますし、ここ日本でも少しずつ「日本ワイン」の新酒が発売されています。
ここ数年で、日本で栽培されたぶどうで作られた日本ワインは少しずつ有名になってきました。近所のスーパーでも売られているのを目にする機会が増えたほど。
日本ワインを作るワイナリーも増えてきていて、今や全国各地に大小さまざまなワイナリーがある状況です。
今回は、この静かな温泉旅のブログで特に取り上げる地域の中でも、特にワイナリーの多い、山梨県の「勝沼」と、長野県の「塩尻」とを紹介してみます。
同時に、近くの温泉地についても書いておきたいと思います。ワイナリー巡りと、温泉旅と。
ワイナリーを巡る
ワイナリー巡りの楽しさはいろいろです。
- そのワイナリーのワインを試飲でき、気に入ったワインをその場で購入できる
- カフェやレストラン等があれば、ワインと一緒に食事も楽しめる
- ワインの製造や貯蔵の設備を見学できる
- ぶどう畑が近くにあれば、一緒に見学できる
- 歴史はあり古い建物が残るワイナリーでは、歴史を感じることができる
たいていは、ワイナリーはぶどう畑の近くにあります。秋はぶどうの葉も色づく頃。
そんなぶどう畑の中に、ワイナリーの建物があります。まさに工場のような広い建物もあれば、戦前からある建物をそのまま利用したワイナリーも。
中に入ると、ワインの試飲と購入とができるスペースがあります。試飲の仕方もいろいろ。
- 冷蔵庫などに試飲用のボトルがあり、小さなカップで自由に試飲できる
- スタッフの方に、試飲したいワインを注いでもらう
全て無料、というワイナリーもあれば、全て有料のワイナリーもあります。その会社のワインの中でも高級なワインのみ有料にしているところもありますね。
ワイナリーの脇に、カフェやレストランがある場合もあります。
秋の週末は混雑しているところが多そうですが、ワインのみを試飲するより、食事と一緒にワインを楽しむ、というのもまたいいですね。
試飲の話から入ってしまいましたが、もちろん施設や畑を見学することもできます。見学は予約制のところと、自由に見学できるところとがあります。
スタッフの方に案内されつつ、ぶどうが絞られ、発酵し、貯蔵され、瓶詰めされるところまでを見ると、まさに大人の社会科見学。
これから紹介していく、山梨県の勝沼や長野県の塩尻は、そんなワイナリーが複数集まっているので、散歩しながらワイナリーを回ることができます。
勝沼のワイナリーと温泉旅
山梨県甲州市の勝沼には、約30か所ものワイナリーがあります。
勝沼へのアクセス
首都圏からは、JR中央本線で向かうか、中央高速バスで向かうことになります。試飲もしたいですし、公共交通機関で行きましょう。
電車で向かう
最寄りの駅は「勝沼ぶどう郷」駅。普段は特急列車が通過するちいさな駅ですが、土日・祝日など、一部の特急「かいじ」が停車します。
また、特急料金がかからない「ホリデー快速ビューやまなし号」という快速列車も、勝沼ぶどう郷駅に停車します。11月までの土日メインで運行しています。
「ホリデー快速ビューやまなし」の詳しいことは、ひささんのブログでご覧ください。
特急列車や快速列車が運行していない日や時間帯に電車で勝沼を目指す場合は、
- 普通列車でゆっくり、勝沼ぶどう郷駅を目指す。
- 特急かいじで手前の「大月」駅で降りて、そこから普通列車に乗る。
- 特急かいじで1つお隣の「塩山」駅まで向かい、タクシーに乗る。
この3パターンになります。
のんびり普通列車の旅もいいものですが、やはり時間がかかるのがネック。
- 特急かいじ:新宿から勝沼ぶどう郷まで約1時間半
- 普通列車:新宿から勝沼ぶどう郷まで約2時間
普通列車は途中で特急列車や貨物列車に追い越されつつ、全ての駅に止まっていくので時間がどうしてもかかるのですね。まあ、30分程度の差ではありますが。
お急ぎなら、3の「特急かいじで1つお隣の「塩山」駅まで向かい、タクシーに乗る」でも良いかと思います。塩山駅にはすべての「かいじ」が止まります。
勝沼ぶどう郷駅からでも、塩山駅からでも、ワイナリーが集まるエリアは少し離れているので、タクシーに乗ってワイナリーへと向かうことになりそう。
一番ワイナリーが多く集まるエリアまで、勝沼ぶどう郷駅からは約3キロ。晴れていれば、ぶどう畑を眺めつつ歩くのも楽しい道です。
一方、塩山駅からですと、その倍の約6キロ。ちょっと歩くのは大変かもしれませんので、ここはタクシーかな、と思います。
高速バスで向かう
一方、高速バスで向かうという手もあります。新宿(バスタ新宿)から、甲府行きの高速バスが頻繁に出ています。本数は1時間に1本から2本ほど。
渋滞さえなければ・・・ですが、新宿から勝沼バス停まで、1時間半ほどで到着できます。土日は確実に渋滞するので要注意ではあります。
先ほど「ワイナリーのが集まるエリアは駅から離れている」と書いたのですが、高速バスのバス停はぶどう畑に挟まれた幹線道路沿いで、ワイナリーも近いです。
大半のバスが停車する、勝沼バス停からは1キロちょっと。もちろん、その途中にワイナリーも点在しています。
一部のバスは、上記の勝沼バス停を経由しないのですが、その場合は「中央道釈迦堂(しゃかどう)」というバス停で降りることになります。
まあ、釈迦堂バス停の近くにもワイナリーがあり。犬も歩けばワイナリーに当たるのです。。。
ワインを選ぶ
さて、ワイナリーに着いたらワインを選んでみましょう。
勝沼と言えば、辛口の白ワイン、特に、地元の「甲州」という種類のぶどうで作られたものが有名。
日本の品種なので、普段の和食に合うタイプが多くて、日本酒のように合わせられます。鍋料理や、お刺身、そば、塩の焼き鳥等々。。
赤ワインもいろいろありますが、一番種類が多いのは「マスカット・ベリーA」というぶどうで作られたワインかと思います。こちらも日本の品種。
軽めのワインが多く、こちらは照り焼き、タレの焼き鳥等に合います。国産つながりで、メイドインジャパンのくせのないチーズと合わせたりも。
このページは10月の終わりに書いていますが「甲州」の白ワインと「マスカット・ベリーA」の赤ワインは、毎年11月3日に新酒「やまなしヌーボー」が解禁されます。
新酒のボトルの栓を抜いたら、ブドウのみずみずしい香り。ボジョレーヌーボーより少し早めの解禁です。
近くの温泉
ぶどうの丘
ワイナリーの前後に温泉にも行きましょう。ワイナリーに近い温泉は「ぶどうの丘」。
その名の通り、小高い丘の上にあり、お風呂から勝沼の景色を一望できます。
ワインなどの売店や、試飲ができるワインカーヴもあるので、ぶどうの丘を拠点にしてあちこち目指すのもいいですね。
勝沼ぶどう郷駅から徒歩15分のところにありますが、アップダウンがあるので、歩きたくない方はタクシーで。
ぶどうの丘には宿泊施設もあります。ここで泊まるのが一番幸せなのかもしれませんが、人気の施設で週末は満室のことが多いようです。
塩山温泉
勝沼ぶどう郷駅のお隣「塩山(えんざん)」駅から歩いて行けるところに、塩山温泉という静かな温泉地があります。
塩山駅の北口から静かな商店街を抜けていくと、古びていて小さな温泉宿が数件ある、渋めの温泉です。
多くの宿が低料金で泊まれるので、リーズナブルに利用したい人向け。
ワイナリー巡りの後で泊まるなら、まっすぐタクシーで目指すことになりそうです。
自分もワイナリー巡りの後で塩山温泉に泊まったことがありますが、タクシーで向かいました。地図で見ると、7キロほどです。
岩下温泉
勝沼のある甲州市のお隣、山梨市にある「甲州最古の温泉」こと岩下温泉。住宅地と畑の中にある一軒宿です。
甲州名物「ほうとう」が出てくるので、ワインと一緒に楽しみたいところ。ということは、もしかしたらワイナリー巡りの前泊の方がいいのかも? と思ったりします。
ちなみに勝沼までは10キロほど離れています。
源泉の温度が冷たいので、旅館のある新館のお風呂は適温に加温してあります。日帰り温泉のある旧館のお風呂は、沸かした温泉と冷たい源泉との両方があります。
石和温泉
山梨市のそのまた隣にある石和温泉は、山梨県の温泉で一番規模の大きい温泉地です。勝沼からも10キロほどの距離で、意外と近いところにあります。
なお、温泉街の近くにも、ワイナリーが2か所あります。さすが山梨県・・・。
塩尻のワイナリーと温泉旅
ところ変わって、山梨県のお隣、長野県。こちらも塩尻駅の周辺に約10件のワイナリーがあります。
出典:
桔梗ヶ原と呼ばれるあたりで、ぶどう畑が広がっています。
塩尻へのアクセス
電車で向かう
最寄りはJR中央本線の塩尻駅。新宿と松本とを結ぶ特急「あずさ」の多くが停車します。(一部、通過する列車もあります)
また、名古屋と長野とを結ぶ特急「しなの」も停車するので、名古屋方面からのアクセスも便利なところ。
主に見学できるワイナリーは「林農園(五一わいん)」「井筒ワイン」「信濃ワイン」あたりになりますが、こちらは塩尻駅から3キロほど離れています。
桔梗ヶ原のぶどう畑を眺めつつ歩いてみたこともありますが、歩くのがしんどい、という方はタクシーで向かってもいいでしょうね。
高速バスで向かう
一方、高速バスなのですが。塩尻に泊まる高速バスはさほど多くはありません。
新宿から長野県内の各地に向かう中央高速バスの中で「木曽福島」に行く便があるのですが、このバスが塩尻駅に停車します。1日2本の運行です。
もしくは、概ね1時間おきに新宿を出ている「諏訪・岡谷線」のバスで首都圏から見て手前の「岡谷」まで行って、そこから電車に少し乗るのが現実的でしょうか。
岡谷から塩尻までは2駅で、普通列車で10分ほどです。
ワインを選ぶ
さて、塩尻に着いたらワイナリーに行ってみましょう。
かつて塩尻は、アメリカ系のぶどう品種を使った甘口のワインが主に作られていたようです。赤はコンコード、白はナイヤガラ、という品種。
それらのぶどうで作られた甘口のワインは今も多く売られていますし、ぶどうジュースにもなっています。
その後、ヨーロッパ系のワイン向け品種のぶどうも植えられるようになりました。特に、メルロー種でつくられた赤ワインの評価が高いです。
もちろん、先ほどのマスカットベリーAのワインもあります。
一方、白ワインですと、有名な欧州系の品種「シャルドネ」の白ワインが定番かもしれません。もちろん他にもいろいろあるので、飲み比べてみたいところ。
また、ここ塩尻に特有なのが、日本の品種「竜眼(りゅうがん)」というぶどうで作られた白ワインです。別名「善光寺ぶどう」とも。
ぶどうの見た目や味わいは、お隣山梨県の甲州ぶどうに似ている気もしますが、ぶどうの果実らしさは竜眼の方があるような気がします。
レアなので、こちらもぜひ試してみてください。
近くの温泉
ワイナリーの集まる塩尻市には、温泉はあまり多くはありません。ということで、観光で行くのであれば、お隣の諏訪や松本の温泉に泊まってもいいかなと思います。
上諏訪温泉・下諏訪温泉
諏訪には、上諏訪温泉・下諏訪温泉の2か所があります。諏訪湖や諏訪大社などもあり、温泉と観光とワイナリーを楽しむ旅、という、なかなか良さそうな。。
上諏訪駅には多くの特急あずさが停車します。町と温泉街とがすぐ近くにあって、温泉街も大きくて観光客も多く、もちろん諏訪湖も歩いて行けるところにあります。
ワイナリーの話をしているページですが、上諏訪には駅から歩いて行けるところに酒蔵が5件ほど集まっており、日本酒が好きならこちらも楽しいと思います。
また、下諏訪は上諏訪に比べて静かなたたずまい。いい雰囲気の共同浴場もあります。
4つある諏訪大社のうち「下社春宮」「下社秋宮」は、JR下諏訪駅から歩いて行けます。
浅間温泉・美ヶ原温泉
長野県で2番目に人口の多い町、 松本。塩尻市の隣町で、塩尻からは普通列車で20分ほど、特急列車では10分ほどです。
松本市といっても広くて、温泉もあちこちにあるのですが、ここでは松本の街中から近いところにある、浅間温泉・美ケ原温泉を取り上げてみます。
駅前にあるバスターミナルからバスで10分から20分ほど。住宅街の中に温泉宿が並んでいます。このページで詳しく書いてみました。
松本は国宝の松本城があるからでしょうか、これらの温泉地も予約が取りにくい時期もありますが、町から近いのは便利ですね。
なお、美ケ原温泉から約3キロのところに「山辺ワイナリー」というワイナリーもあります。
というわけで
秋になり、甲州ワインの新酒解禁も近くなってきたので、ワイナリー巡りと一緒に温泉旅でもいかがでしょうか、というページを書いてみました。
実はもっと早くアップしようと思っていたのですが、その中であの台風19号がきて、ワイナリーへ向かう特急列車や高速バスが一時運休していたので、いったん中止。
電車とバスの復活を待って、ここで公開することになった次第です。
雨の多い日本でぶどうを栽培してワインを造る、というのは、気候的にはあまり恵まれた環境にない、と、とあるワイナリーの社長さんから聞いたことがあります。
それでも日本のぶどうを使って作られたワインは日本の食事との相性がいいですし、それを知る人が増えてきたのか、日本ワインの人気もじわりじわり、来ているようで。
気候という意味では今後も厳しい年が続くのかもしれませんが、日本のワイナリー巡りや、普段の食事と一緒の日本ワインを楽しんでみる、というのもいいと思います。
最後に、ここでは勝沼と塩尻にスポットを当ててみたのですが、他にもワイナリー巡りを楽しめる場所はいくつもあります。
例えば、塩尻と同じ長野県の東信地方には「千曲川ワインバレー」という、比較的新しいワイナリーが集まる地域があります。
また、東北地方、山形県の赤湯温泉には、温泉街の近くにワイナリーがいくつかあり、温泉とワインとの距離がぐっと近いです。
そんな場所にも、これから少しずつ、訪れていきたいと思った次第。
さて、今度はどこへ行こうかな。