2021年夏の静かな温泉旅は、少しご無沙汰していた栃木県に行ってみることにしました。
感染症のことで、世の中の雲行きが非常に怪しくなっていた頃。
直前までいろいろ考えて、最終的にはとてもシンプルな旅になったような気がします。
旅の計画
まず行き先を栃木県にして、実は別な温泉地の宿を手配していました。
宇都宮で餃子を食べて、温泉に入って、乗ったことのないローカル路線バスに乗って・・・というプランだったのですが、状況を見ていったん取りやめ。
出発日の数日前にネットで宿をもう一度探して、前から気になっていた湯西川温泉の宿に空室が出ていたので、そこを予約したのでした。
次に、電車を手配します。
最初のプランはこんな感じ。
朝早い特急列車で都内を出て、東武鉄道のSL列車「SL大樹」に乗って、温泉でゆったり過ごし、帰りもどこかで観光し、夕方の特急で帰ろう、と。
ただ、天気が良くない様子。雨だと屋外の観光ができず行ける場所が限られますし、世の中の状況も良くないし・・・
で、今回は宿と家との往復だけにすることにしました。バブル方式? いや、そんなことはないか。
1日目(新宿→鬼怒川温泉→湯西川温泉)
スペーシアに乗って
雨の新宿駅。
季節は8月、少し暑いのですが、今回の目的地、栃木県日光市は肌寒いらしく、あえて長袖で出かけます。
新宿から乗るのは、特急「スペーシアきぬがわ」。東武鉄道の車両「スペーシア」が、JRの駅に乗り入れてきました。
ゴージャスな金色の電車は少々古びているものの、かっこ良くて座席もゆったり。
新宿駅を出たあたりでは乗車率は2割ほどでしたが、途中の池袋駅、浦和駅で少しずつお客さんが乗って来て、最終的には3割くらいになったようです。
スペーシアは、曇り空の関東平野を走っていきます。
途中の栗橋駅でいったん止まり、JRの運転手さんと車掌さんが降りて、東武鉄道の運転手さんと車掌さんに交代。ここがJRと東武の境目なのです。
JRの線路から東武の線路に入る際、一瞬車内が暗くなりました。JRと東武との境目は、電車に電気が供給されないのです。
そんなこんなで東武線に入ってからは、少し電車の走るスピードが上がったような気もします。
車窓には、牛舎と田んぼが目立つようになりました。とちぎ和牛の看板を見て、栃木県に入ったのが分かります。
栃木駅、新鹿沼駅と停車しつつ、徐々に田んぼが少なくなり。山が近づいてきたような気がしたところで、下今市駅に到着です。
下今市駅からは単線になり、スペーシアも速度を落とします。途中の駅で、反対側からくる列車とすれ違ってから、終点の鬼怒川温泉駅に着きました。
リバティに乗って
次に乗る電車は20分くらい後にやって来ます。時間があまりないので、駅前を少し散歩してから、湯西川温泉駅までのきっぷを購入。
紙のきっぷを買うのが久しぶりな気がします。
乗るのは、特急「リバティ会津」。特急ですが、今回乗る区間は特急券がなくても乗ることができますし、通過する駅もほとんどありません。
3両編成のリバティにはお客さんが結構乗っていましたが、多くのお客さんが鬼怒川温泉駅で降りていきました。
リバティ会津号は、いくつも並ぶ鬼怒川温泉の廃ホテルを横目に、ゆっくり走っていきます。
廃墟が目に入ってくるので、もう少しスピードを出して、廃墟が見える時間を短くしてもいいのに・・・いつもそう思う次第。
鬼怒川温泉駅から2つ目、新藤原駅からは野岩鉄道に入ります。ここから急にトンネルが増えてきます。
野岩鉄道の車掌さんが検札にやって来ました。きっぷを拝見します、というのも何だか久しぶりな気がします。JRの特急ではすっかり見なくなりました。
川治温泉の温泉街を見下ろしてから、長いトンネルに入ります。湯西川温泉駅はトンネルの中。エレベーターで地上の改札口へ。
路線バスに乗って
湯西川温泉駅は道の駅が併設されていて、そこそこ賑わっています。バスが来るまでにコーヒーを注文して飲みました。少し眠かったのです。
さて、雨の中バスが来ました。結構乗るのかなと思いきや、乗ったお客さんは自分含めて3人だけ。
バスは3人だけを乗せ、湯西川ダムのダム湖に沿って走っていきます。いくつもトンネルを抜け、ノンストップで走っていき。
途中で案内放送が流れます。湯西川温泉は、源氏から逃れて落ちのびてきた平家の武士が、お湯が湧いているのを見つけたのが由来なのだそう。
赤い橋を渡って、見覚えのある湯西川の温泉街へと入っていきました。今日の宿は確か、終点のバス停の目の前だったはず。
と思って乗っていたら、バスは宿のほうへは行かず、少し坂を登った先で止まりました・・・あれ?
どうやら終点のバス停が移転したようです。目の前には「平家の里」という施設があり。面白そうなので、宿に荷物を置いてから行ってみようと思います。
平家の里と、温泉街と
少し歩いて、宿へとチェックイン。
お部屋に荷物を置いて、ひとお風呂に入ってから、先ほど降りたバス停の目の前にある「平家の里」を見に行くことにしました。
宿のフロントで入場券が安く売られていたので、宿で入場券を買ってから出かけます。大きな傘を貸していただき、また、雨の中。
平家の里は、古い建物を集めた民族村です。
個々の建物に、平家の歴史や、昔の湯西川温泉の生活で使われていた道具、民芸品が展示されていました。
お客さんはまばらで、雨の中静かに見て回ります。
ぐるっと見て回って最後に、お客さんが誰もいないお休み処でアイスコーヒーをいただいて、温泉街へと戻りました。
湯西川温泉の温泉街は、こじんまりしているものの、お店が多いです。静かな場所ですが、閉店したお店や廃業した宿が少なく、寂しい感じではありません。
酒屋さんや土産物屋さんを見つつ、地酒とかおつまみとかを少し買ってから、宿へと戻りました。
部屋の窓からは、雨の中増水している湯西川と、その中で川遊びをしている若者たちが見えます。窓にトンボが止まり。
夕食後に3回、お風呂に入りました。お客さんはそこそこ泊まっていたものの、貸切風呂が2つあったからなのか、お風呂はいつも空いていました。
3回も入ったせいか、かけ流し温泉のパワーがあったのか。最後は少し疲れて眠くなり、早めの消灯。おやすみなさい。
2日目(湯西川温泉→鬼怒川温泉→新宿)
よく眠れました。
川沿いの温泉宿に泊まると、川の音が気になって眠りが浅くなることがありますが、この時はそのようなこともなく。
くしゃくしゃの浴衣を無理やり整えて、朝風呂へ。2つある貸切風呂の片方が空いていて、貸切で朝風呂を楽しみます。
温泉宿の朝風呂は、いわばゴールデンタイム。混んでいることが多いので、静かに朝風呂を独占できるのは嬉しいなと。
宴会場で朝食をいただきます。食後のコーヒーがまた嬉しい。
寄り道もリスクがあるような気がして、今日はまっすぐ帰ります。朝一番の路線バスに乗ることにしました。朝一番、と言っても9時ですが。
残りわずかな時間、お部屋でゆっくり過ごしてからチェックアウトします。天気は相変わらずの雨。お世話になりました。
早く出過ぎたので、バスが来るまで時間があるようです。
雨の中、屋根のないバス停で待ち続けるのもな・・・と、温泉街のはずれまで歩いて、途中のバス停からバスに乗ろうと決めました。
10分ほど歩いて、バス停3つばかり通り過ぎたあたりでしょうか、後ろからバスがやって来ました。
既に結構お客さんが乗っています。始発のバス停で待って座ればよかったかも知れません。通路に立ちます。ちょっと後悔。
昨日通ったトンネルを抜け、湯西川温泉駅で半分くらいのお客さんが降り、後ろの席に座れました。
強い雨の中、ダム湖を横目に森の中をバスは走っていき、ヘアピンカーブを降り、川治温泉の温泉街を走り抜け。
川治温泉からは誰も乗ってきません。皆さん電車を使うのでしょうか。
また山の中に入り、龍王峡の脇を抜け、やがて鬼怒川温泉の廃旅館たちが見えてきました。
廃業した旅館の名前を冠したバス停を通り過ぎます。バス停の名前を変えればいいのに、と思います。
そうしてバスは終点の鬼怒川温泉駅に到着。ここからは、新宿行きの特急「きぬがわ」で帰ります。
駅に着くと、ちょうどSL大樹が鬼怒川温泉駅に着いた後で、SLが駅前で方向転換し、折り返しの準備をこれから始めるところのよう。
今回の旅のまとめ
時期的に、旅に出るにはあまり良いタイミングではなかったので、どのような旅にしようか、出かけるまでに迷ったのも事実。
往復の特急電車は乗客も少なく、静かでした。
温泉街も静か。ただ、今回宿泊した湯西川温泉は山奥にあって、もともと静かな場所ではあります。
それでも宿にはそこそこの数のお客さんが泊まっていたようでした。
今回は飲食店での食事も控え、寄り道もほとんどせず。自宅と宿との往復に近い、まさに「静かな温泉旅」になったような気がします。
今回行った場所
(今回の温泉旅で出かけた観光スポット、お店等のリンクを後日紹介予定です。)
さて、今度はどこへ行こうかな。