自分にとって、温泉旅はしばしば心身の調子を回復させるためにすることです。
会社員になって10数年になりますが、時々ひどくくたびれる時も正直ありまして、そんな時に泊まりに行く温泉宿は、自分の回復のための場所なのです。
温泉には効能があります。この温泉はこの病気や症状に効く、というものです。
もちろん、ちょっと入っただけではその効能はあまり実感できませんが、それでも、温泉に入って体を休めることで、少しずつ体が回復に向かっているのを感じます。
今回は、温泉で回復できたな、と思えた経験のことを書いてみます。
四万の病に効くという。
自分はストレスが胃腸に来るタイプでして、十二指腸潰瘍にかかったこともあります。
胃や十二指腸の潰瘍になると、胃カメラを飲んで胃の中を見て、しばらく薬を飲んで直していく、というのが恐らくスタンダードな治療法かなと思うのですが。
もう10年以上前のこと。胃腸の調子を崩して、クリニックで出してもらった薬を飲んでいた時期がありました。
なかなか調子は良くならず、クリニックに行くたびにどんどん薬の種類が増えていく。薬だけでは良くならないのかな、と不安になったものです。
そんな中「温泉に入ったら良くなるかな」と思い立ったのです。
さっそく本屋に行って温泉湯治の本を買って、胃腸病に効くという温泉をいくつかピックアップしている自分がいたのでした。
今思えば、相当精神的にも疲れていたのだろうなと。。
それで、北関東のとある温泉地を見つけました。温泉を飲むことで胃腸病に効能があるというのです。胃腸病だけではなく、四万の病に効く温泉とのこと。
そう、その名は「四万温泉(しまおんせん)」。群馬県の有名な温泉地です。
当時は、四万温泉でも楽天トラベルやじゃらんnetに掲載されている宿は少なく、ひとりで休前日に泊まれそうな宿がネットで見つからなかったので、仕事の日の昼休みに観光協会に電話して宿を予約しました。普段電話はしないのですけど。
大まかな予算と、人数がひとりであることを伝えたところ、湯治宿のようなところでよろしければ、ということで、宿を押さえてくださいました。
そう、湯治宿がちょうど良かったんだ、と心の叫び。往復の高速バスとのセットプランでした。
ゆったり・ぐったり。
さて、冬の土曜日の朝、高速バスで出発です。バスは関越道の渋滞を抜け、やがて関越道を降り、川と線路に沿う一般道路を少しずつ登っていきます。
温泉に行くバスだからか酒盛りをしている乗客が多く、運転手さんが少し気の毒ではあります。
四万温泉にはお昼に到着。本来の宿のチェックイン時刻まではまだ時間が余っているのですが、今回予約したプランの特典で、宿へはバスが着き次第チェックインできたのでした。
案内された2階の部屋の窓の外は、ひたすら川が流れて。
胃腸がしんどくても何だかんだでお腹は空くので、宿の方にお昼のおすすめのお店を聞いて、その中の1つだった近くのそば屋さんでお昼をいただき、そのまま温泉街をふらついてみました。
温泉街には「飲泉所」がいくつかあって、温泉を飲めるようになっていました。口に含んでみるとなかなかの熱さでしたが、胃腸が治るといいなと思って飲んだのでした。
宿の内風呂にも竹のコップがあって、飲泉ができたのでした。ほんのり塩の味。
少し体が冷えたので、宿に戻ってひと風呂、その後でお食事です。素朴な家庭料理で、お部屋で食べられるのが良かったです。
お風呂も小さいながら貸切できて、ひとりで過ごすことで少しずつ回復していっている感じがしました。
翌日の高速バスで帰ったのですが、バスの出発時刻が午後だったので、温泉街をふらついたりしながら、ゆっくり過ごしました。
この週末が胃腸に直接効いたかどうかは分かりませんが、行ってよかったなと思えたのでした。
そして連泊も。
その頃の胃腸の不調はおそらく仕事関係のストレスが大きな要因を占めていたのだと思います。
結局転職活動をして当時働いていた会社を退職することになり、次の会社が決まった直後にもう一度その宿に泊まりました。
今度は2月で、ちょうど3連休だったので2泊することができました。
次の会社が決まったとはいっても、その頃も退職をやめるよう説得されたりしていた時期で、疲れ気味ではあったのです。
ちなみにですが、決して自分が仕事ができたわけではないです。退職しようとする人はひととおり、かなりの引き留めに合ったようでした。
今となってはなかなかできないことですが、同じ温泉宿に2泊するというのは本当に時間がゆったり流れていて良いものです。
2日目も、朝食の後で帰り支度をしなくて良いわけですから。さあ、今日は何をしようかな。という感じ。
2日目の朝から雪が降り出しましたが、することも特にないので温泉街を一通り散歩しました。南北に長い温泉地なので、歩いているだけで結構時間が過ぎていきます。
その日の夜は、川沿いの露天風呂で雪を見ながらのんびりと。
その後も四万へ。
その宿はなかなか予約が取れません。部屋の数が4部屋ほどしかないのと、宿泊料金が安いのですぐに埋まってしまうのでしょう。
最初に泊まったその宿自体へは、2連泊した同じ年の夏に友人と1泊してからしばらく行けていないのですが、さらにその後も、四万温泉には別な宿に2度泊まることができました。
ガイドブックに大きく載っているような有名な温泉地へはあまり行かない自分ですが、四万温泉は有名で観光客も多いのに、なぜか静かでくつろげる。
今は胃の調子が極端に悪くなることはないのですが、行くたびに、しんどかった頃を思い出します。
初訪問から10年ほど経過していても、四万温泉のたたずまいはさほど大きくは変わっていませんが、何故でしょう、疲れ果てていた時に訪れた四万の風景と、今そこまででもない時に訪れる四万の風景とが、どことなく違う感じがします。
今は体調的には落ち着いているので、温泉に入ったり温泉街を眺めたりする余裕が自分にあるのかもしれません。
でも思い返せば、しんどかった時期に四万のお湯に浸かって回復できたから、今こうして余裕を持てているのかも。まあ、仮説なのですが。
さて、今度はどこへ行こうかな。